賀露誌(平成21(2009)年発行)には、賀露に伝わる民話として「吉備真備伝説」、「因幡堂薬師伝説」、「ひょうたん」が紹介されています。一方、口伝えでの伝承であったため忘れられた民話もあります。忘れられた民話「かろのかんざえもん」と「加路の男女房」をご紹介します。
かろのかんざえもん
(昭和52(1977)年発行「因伯民談」に掲載 原文を読みやすく書き直しています)
加露の勘左衛門は、人の仕事の手伝いが大好きでした。そのため加露では、「勘左衛門」は「手伝う」と同じ意味に使われ、仕事の手伝いを頼む時は「ちょっと勘左衛門して」とか、余計なお世話をとがめる時「人の勘左はしなくていい」と言います。
※余談:賀露町在住の方に、「ちょっと勘左衛門して」といった表現を聞いたことがあるかお聞きしましたが、どなたもご存じではありませんでした。しかし、「かんざ」という名に由来する人が実在していたらしいというお話をお聞きしました。
加路の男女房(おとこにょうぼう)
(昭和26(1951)年発行「因伯傳説集」に掲載 原文を読みやすく書き直しています)
加路の乙(名前を伏せたと思われる)は、姿は男性だけれども、心は女性でした。髪を女性のように伸ばし、女性の仕事である機織りや、糸をつむいだりしていました。村人は協議して侍のように頭を剃らせました(さかやき)が、心は変わりませんでした。それ故、皆が男女房と言ったそうです。
※余談:月代(さかやき)は、江戸時代以前の日本にみられた成人男性の髪型で、前頭部から頭頂部にかけて頭髪を剃りあげた部分を指します。現代では多様な性を意味する「LGBT」が社会の課題となっていますが、昔から存在していた課題のようです。