賀露町4区の新川春海さんから、小冊子「賀露の方言」を紹介していただきました。
この小冊子には、賀露町6区の故 網尾一男さんが集めた約600語の方言が収録されています。
網尾さんは、年配者が何気なく日常的に使っている言葉が死語になりつつあると実感し、「賀露に残る方言を若いモンに伝えたい」と6年間かけてノートに書き留めたとのことです。
網尾さんの偉業を知った当時の賀露地区公民館長 秋本昌之さんは、収集された方言の語源を広辞苑や国語辞典などで調べ、その意味を研究して103ページの小冊子に編集されました。あとがきには、「賀露のみの方言というのは予想以上に少なく、語源のはっきりしている言葉が多かった」、「大正9年生まれの私(秋本さん)が知らない方言が相当あることから、方言は急速に姿を消していったと思われる」との考察が加えられています。
意味や語源が不明確な方言の例
・わいら、あめーたこめーた 言ってせんだがなあ
(意味)あなた方は、ああだこうだというばかりで何もしない
・あまやちょちょら
(意味)あまっちょろいことや口からでまかせでは駄目だ
・まあ、いっかいばありやっとるだがな
(意味)まあ、人並みになんとかやっています写真の説明を記入します |
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秋本さんは、方言が消えていったのは「口蓋化による発音の消長」と関係があると指摘しています。口蓋化により、「セ」は「シェ」、「ゼ」は「ジェ」と発音(センセイ[先生]をシェンシェ、ゼッタイ[絶対]をジェッタイと発音)します。
鳥取大学の調査※によると、昭和27年以前に生まれた人は年齢が高くなると口蓋化が多く、昭和28年以降に生まれた人は口蓋化が少ない傾向にあるそうです。従事する仕事が多様化し、賀露地区外で育った女性が増え、高齢者と同居しなくなったことにより口蓋化が減少し、同時に方言も消えていったと考えることができそうです。
賀露の方言が消滅するのは時間の問題なのかもしれません。
網尾さんと秋本さんが残されたこの小冊子は、賀露の大切なお宝になりました。
※「口蓋化した/Se/,/Ze/音節の共通語化に関与する要因について」鳥取大学国語学研究室(1988年)
※ 小冊子「賀露の方言」は、昭和63(1988)年8月23日付日本海新聞に紹介されました。また賀露誌にも収録されています。