新の子宝地蔵

 前々からの望みがかなって、めでたく結婚した夫婦が、まず一番に願うことは、赤ちゃんが早くできることです。それが、一年たっても、二年たっても、子どもが生まれるきざしが見えないと、だんだんあせってきます。

「あんた、今日とっても、ええ話を聞いてきたぜ」と、ふとんの中で、嫁さんが夫に話かけてきました。「アノー「新」ちゅう所になあ、子宝地蔵さんがあってなあ、とっても、よう願いをきいてごされるだって、あしたいっしょに参りたいと思っとるんだけど」もちろん夫も承知しました。

 翌朝二人はつれだって、「新」の子宝地蔵へ参拝に出かけました。お地蔵さんは、おなかに玉を抱いた、優しい姿で座っていました。二人は両手を合わせて「一日も早く、身ごもらせてください。」と、心をこめて拝みました。その後も二人は、早起きして、子宝地蔵に日参しました。

しかしお地蔵さんは、なかなか二人の祈りを、かなえてくれませんでした。まだまだ、信心が足りないのだと思った二人は、ある夜、地蔵さんを、自分の家に持ち帰って、昼夜別なく、子宝が授かりますようにと、一生懸命祈り続けました。ある夜、子宝地蔵が、お嫁さんの夢に現れて、「私を早く元の場所に戻してくれ。村人達が大騒ぎしている。戻したら、良いことが起こるだろう」と告げて、姿を消しました。二人は早速、夜を待って、お地蔵さんを元の場所に置いて帰りました。それからも、熱心に信心を続けていたところ、まもなく待望の赤ちゃんが生まれました。大喜びの夫は、近くの川から石を拾ってきて、出産のお礼として、小さなお地蔵さんを刻んで、子宝地蔵の傍らに奉納しました。

 今では、たくさんのお礼地蔵が「新」の子宝地蔵のそばにつまれています。