![]() |
||
|
昔むかし、面影山の中腹に母と娘の二人の親子が住んでいました。ある時、お母さんは、近くの大路山の岩穴に住んでいる友達から、招待を受けて出かけました。お母さんの友達は沢山のご馳走のお膳の真ん中に、初めて見る魚の煮つけを持った皿がありました。「これは人魚という、とっても美味しい魚だから、ぜひ食べてみて」と勧めてくれましたが、その魚の頭の方は、人間の形によく似ていたので、お母さんは気分が悪くなり、手をつけることが出来ませんでした。友達はお膳に残ったご馳走を全部、土産に包んでくれました。家に帰ったお母さんは、貰った土産をそのまま戸棚にしまって、仕事に出かけました。 お母さんの留守中、おやつを探していた娘は、土産の包に気が付きました。包を開けてみると美味しそうな匂いがする、これまで見たことがない魚が入っていました。一口食べてみると、大変美味しかったので、とうとう全部食べてしまいました。お母さんが帰って来ました。「お母さん、戸棚の中にあった珍しい魚は、大変旨かったので、みんな食ってしまったぜ」と話しました。お母さんはびっくりしました。「えっ!あんな気味の悪い姿をしたものを、よくも食べたもンだ。腹が痛くなっても知らんぞ」と暗い顔をしました。 何十年か月日が経ちました。娘は病気になるどころか、以前より一層元気になりました。お母さんが亡くなった後、娘は尼さんになって、お母さんの冥福を祈り続けました。何年経っても歳をとりません。百歳を遥かに超えた超長寿であったそうです。村の人々は、人魚を食べて長生きをした彼女を「八百比丘尼」と呼びました。 面影山の東今在家榜示には「比丘尼屋敷」という場所が残っています。 |